2018年9月30日(日) 天気 雨

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馬は群で暮らす生き物だ。
群で暮らす生き物は,自分よりも強い者に従うようにできている。
弱い者に従っていたら,全滅するおそれがあるからだ。
雄は蹴ったり噛み付いたりの死闘を繰り広げ,勝った者がリーダーとして群を統率する。

つまり,本来群で暮らす生き物である馬に言うことを聞かせたかったら,自分がリーダーだと(少なくとも上位の存在であると)示さなければならない。


家畜である馬は,野良にしておくわけにはいかない以上,人間と共存するためには調教せざるを得ないし,その過程に多少の痛みが伴うことは致し方ないとも思う。

ただ,痛みを与える行為は見ていて心地よいものではないので,どこか胸の奥が痛む。

長い間,これをどう捉えればいいのか分からなかったのだけれど,関わっていきたいのなら,そういう,言わば「汚れ仕事」みたいな部分を否定せずにいたいなと思った。「可哀想」と思う気持ちがどこかにあるのはいいけれど,それを暴走させるのは,わたしの望むところじゃない。

「馬を調教する」ということは「馬に関わっている」ということ。「関わっている」ということは「存在を認め向き合っている」ということ。無関心でいるよりも,ずっと愛情があると,わたしは思う。(※あきらかな虐待行為は別です)



*・゜゚・*:.。..。.:*・゜*・゜



2鞍目も馬場の練習。
常歩も軽速歩も,速歩も駈歩も,巻き乗りも半巻きで手前を変えるのも,安定はしないものの,一応できる。

状況が一変したのは,わたしが苦手な後退をしようとしてからだった。
停止して,脚使いながら気持ち後傾して,同時に手綱をぐーっと引く。

お馬さんはちょっとだけ下がったものの,嫌な感じがしたようで,イライラして首を前に大きく振った。結果,わたしは手綱を持っていかれてしまい,お馬さんはハミのプレッシャーから解放されて満足げな様子を見せた。

すみませんね!ヽ(;TдT)ノ  扶助が下手で!

手綱を持ち直し,苦心しながら,それでも「三歩後退して駈歩発進」を何度か繰り返したのだけれど,お馬さんは段々と頭を振って手綱をわたしから奪う頻度が高くなってきた。

馬の反抗の仕方には色々あって,扶助を無視して動かないこともあるのだけれど,手綱を引いたときに首を前に出して引っ張り返してくることもある。
「お前の言うことは聞かねぇ!(ノ`Д´)ノ」という意思の表れなので,本当はこれ,許しちゃいけない。
でも,普段力仕事をしているわけでもない女性の力では,正直かなり厳しい部分があって(何せ相手は一馬力)全力で踏ん張っても手綱を持っていかれてしまう。

前半はそこそこよかったお馬さんとの関係は,これをきっかけに最悪なものになってしまった。

「反抗したらこいつは手綱を譲る」ということを覚えたお馬さんは,その後何度も同じことを繰り返し,練習に支障が出るような状態に。

乗り手であるわたしが格下認定され,馬がワガママをしていることは明白。
わたしが下手なことをしたという自覚はあるので(だって,上手な人がやればこんなことにならないもんヽ(TдT)ノ),馬に申し訳ない気持ちもあるのだけれど,もうこうなると放置はしておけない。


指導員さん 「……完全に馬がナメてる……!(`・ω・´)

見ていた指導員さん,調教スイッチが入ったようで,長鞭を手に恐い顔で正面からやってくる。


ちょおっ 待って! わたしもろとも調教しないで!Σ(゚д゚;)))


真正面に立ちふさがる指導員さんから指示が飛んでくる。


指導員さん 「停止!(`・ω・´)」

小夏 「はい!(゚д゚;)」

指導員さん 「後退!(`・ω・´)」

小夏 「はい!(゚д゚;)」

馬,強引に手綱を引っ張り返す反抗をして,即座に叱られる。

小夏 「……!!!!(;/TДT)/」

お馬さんは叱られたときに跳ねたり一瞬暴走しかけたりするので,何度かわたしが悲鳴を上げる羽目になった。
わたし馬から降りていいかな!? (´;ω;`) と思ったものの,指導員さんは「引っ張り返すな。乗ってる人間の言うことを聞け」と教えたいのだから,降りてしまったらたぶん意味がないのだ。
急な動きをする馬から落ちなかった自分えらい(;TДT)

なだめて馬を元の場所に戻し,同じことを繰り返す。

反抗したら鞭で,素直に後退したら愛撫。
停止,後退,停止,常歩,停止,後退,停止,常歩……

もう……もう何度これ繰り返したことか!

ごめんよ。わたしのせいできみが怒られることになってしまった。
そもそもわたしが下手なことやったから反抗が始まったのに。
ごめんねごめんね(p_q*)シクシク

お馬さんはやっぱり叱られるのが嫌なので,少しすると手綱を引き返す反抗をやめるようになった。後退も割とスムーズにできるようになる。

でも,よく考えたら,馬が怖いのは指導員さんであってわたしではないのでは?
この指導員さんがいなくなったら,結局わたしはナメられ放題なのでは!?(=゚ω゚=;)


ヒエラルキー的にはこんな気がする。

指導員さん > 馬 > 小夏


2人がかりで馬を調教しているような時間がしばらく続いたのだけれど,わたしの後退の下手さを知っている指導員さんは,馬の調教を続けつつ,わたしにも注意を促してきた。


指導員さん 「下がったとき身体前に倒さないで!(`・ω・´)」

小夏 「はい!(゚д゚;)」

指導員さん 「『はい』って,ほらまた!(`・ω・´)」

小夏 「はい!(TДT;)」

指導員さん 「左引いて! 右ばっかり引くから曲がるんだよ!(;`・ω・´)」

小夏 「……!(≧Д≦;) ぐぎぎぎぎ……←左引いてる

指導員さん 「外方脚で馬体押して! 蹄跡に戻して!」


馬と人間同時にみるとか,すごい大変な ( ´_ゝ`)


でも,この壮絶な調教を兼ねたレッスンの中で,少しずつ何かをつかみ始めた。
身体のバランスも,手綱を引く力の入れ具合も,当たり前だけれど均等でなければ馬は真っ直ぐ下がらない。後ろに引くとき拳を持ち上げるのもNG。体幹はぐらぐらさせずに,腹筋&背筋を硬くしてキープ。

脚で馬体を押して動かすという感覚も,なんとなく分かってきた。
ただ脚で押すのではなく,身体の重心を移動しながら押したほうが効果がある。


そうこうしているうちに,ようやく人馬共にマシな感じになってきたので,レッスン終了。


馬も指導員さんもわたしも,全力で真剣に取り組んでいたので,言葉もなく,くたくたになって馬場を出る。
グ,グローブしてたのに,手綱に引っ張られた薬指が痛い('A`|||)

わたしもお馬さんも,この秋の涼しさの中,全身汗でびっしょりだった。
お,お疲れ。大変だったね,お互いに('A`;)


洗い場に馬をつなぐと,厩務員のお兄さんが手伝いにやって来た。


お兄さん 「随分ハードなレッスンしてたみたいですね(´・ω・`)」

小夏 「下がるのができなくて……(; -д-)」

お兄さん 「下がるのって,バックですか? コツつかめば簡単なんですけどね」


自分のためにも馬のためにも,早くそのコツをつかんで楽にできるようになりたいと思った。

初対面の日なのに大変なことになっちゃってごめんね。またコンビ組む機会があったら,嫌がらずにお願いね。(>_<) わたし頑張るから。

お湯で洗ってタオルで拭いて,お詫びとお礼にりんごをあげて,この日は終了。
ああ,早く上手になりたいなぁ。


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