2019年7月27日(土) 天気 雨 のち 晴れ

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全乗振の乗馬技能認定審査(馬場2級)の試験日。
ジャンプができなくなったわたしは,2ヶ月ほど前から,この日を目指して練習を重ねていた。

この日,わたしは,

出発予定時刻の15分前に覚醒した。

大急ぎで着替えて準備をし,朝ご飯を食べて(←省略しなかった),ちょっとここには書けない速度で車を飛ばして(事故を起こさなくてよかった)クラブに到着。

ま,間に合ってよかった……!(; -д-)ノ

この過程により,たぶん低い血圧が爆上げされ(身体に悪いので推奨はしない),戦闘態勢に入る。こういうときに分泌されるアドレナリンって,脳を覚醒させて集中力を高めたり,運動能力を高めたりするらしいよ。

ああ……でも,やっぱり余裕がないのはよくないな。次回から気をつけます。ごめんなさい。


接近しつつある台風の影響なのか,クラブ周辺では雨が降っていた。
馬術の試合は雨の中でも普通に行われる。
仕方ない。天候は操作できない。
演技が終わったらすぐに着替えれば,風邪もひかなくて済むだろう。

2日後には入院。
3日後には手術。

ここで体調を崩したら,自分が怒られるだけではなく,予定変更により大勢の人に迷惑をかけることになる。それだけは避けたい。


馬房に行くと,黒馬くんはもうすでに綺麗に馬装されていた。
よろしくねー(T∀T) きみにかかってるよー!

お馬さんはいつも通りに落ち着いていた。
馬って緊張しないのかな。わたし自身もそんなに緊張はしていないと思うけれど。
上手くいくといいね,と首を撫でる。

ちなみに,ここしばらくメルカリや人脈を駆使して格安で集めた正装をしていったのだけれど(蒸し暑いのでジャケットは省略),わたしの正装が珍しかったのか,スタッフが数人馬房前に集まってきた。
ベルトがないことを残念がっていて,貸し出しの申し出があったのだけれど,


「おれのベルト貸しましょうか!?(☆°∀°)」
「わたしのベルト貸すよ!( ・∇・)
「おれのベルトを……!(☆°∀°)
     

ありがとうございます(*´ω`*)笑。
でも集団でベルト外し始めるのやめて(笑)。

彼らは愉快で,実に良い人たちだ。

ウエストがゆるいわけでも,シャツが短いわけでもなかったので,ベルトはなしで競技に挑むことにした。


小雨が降り続く中,準備のため馬場の隅に出る。指導員さんがついてくれて,最後の調整に入る。
常歩,軽速歩,速歩,駈歩,巻き乗り,20mの輪乗り,三湾曲,歩様の変換……
この期に及んで,変なミスをしたりして,苦笑いが漏れる。メンタルを壊さないようにするためなのか,指導員さんは怒らずにいてくれた。
 
わたしの出番は後のほうだったので,まだ余裕があるかと思っていたら,前の出場者の準備が整わないとかで,急遽わたしが先に審査をしてもらうことになった。
えええぇぇ!((((;゜Д゜)))
もう出番!?

ドレッサージュ馬場へ行き,入場する前に何度か速歩での巻き乗りを繰り返す。指導員さんからOKが出たので,馬場へ入場。正面の審判員席に,見慣れた人の顔があった。

ん? ……あれ?(つд⊂)ゴシゴシ
見間違いでなければ,あの審判員の席にいるのは,オーナー……?

正面の審判員の席でにこやかな笑顔を浮かべているのは,紛れもなくオーナーでした(笑)。
馬場の試合の審判やってるの,初めて見ましたよ……(´∀`;)
初めてなので,厳しく採点されるのか甘く採点されるのか,見当がつかない。

ここまできたら,もうごちゃごちゃ考えている暇はない。
停止。不動。敬礼。
オーナーが笑顔で頷いたのを確認して,速歩発進。
隅角を通り,斜め手前変換しながら歩度を伸ばす。蹄跡から歩幅を戻し,ここから三湾曲……

というところでまさかのボロ!

うそぉ!? 先週の練習と同じ箇所でボロするの!? Σ(´□`;) なにここ,きみのボロポイント!!?

先週停まられてしまった記憶が蘇り,焦って強めに脚を入れる。どうにか停止はしなかったものの常歩に落ち,速歩を発進し直す。

ひいぃぃ……確実に減点だよ今の!

気を取り直して三湾曲。
その後の常歩パートで,虫が気になるのか頭を振りまくる黒馬くん(進んではいる)。
こ,こんな,こんなんでいいのか!? 美しくないぞ!?

C地点からの駈歩発進。この前の常歩の時点でよく動いていて,反応がよさそうな気配があったので,C地点ギリギリで扶助を出し発進させる。20m輪乗り。そのまま直線で歩度を伸ばす。馬場に斜めに入って中央から速歩,蹄跡から常歩。手前を変えてもう一度。

最後のC地点からの速歩発進。
最後の半輪乗りの半円が綺麗に描けなかったけれど,停止ポイントまで何とか速歩継続。
停止。不動。敬礼。


演技を終えると拍手がきた。
たった一人,見守ってくれていた指導員さんが拍手してくれていた。
なんだか泣ける(´;ω;`)
全部あなたが教えてくださったことです(ノ_<。)


競技を終えての感想は,


もうちょっときっちりやりたかった!(>_<;)


もっと,もう少し……ちゃんとできたはず!
達成感よりも,やや悔しい思いが胸に残った。


馬場を出ると指導員さんがいて,「よくできてたね(^_^)」 と言ってくださった。
出来なかった点ばかり目についていたわたしは,失礼にも 「本当ですか?」 と聞き返してしまった。


指導員さん 「うん,ちゃんと動いていたよ。本番に強いのかな」


ああ……ダメだ,わたし。「素直に喜ぶ力」を失いつつある(泣)。
ここ,「わーい♪」って喜ぶところ!(´;ω;`)


黒馬くんを馬房に戻し,汗だくだったので着替えて筆記試験に臨む(過去問を中心に勉強していたので,試験内容が若干変更されていて焦る)。

その場で採点され,実技のジャッジシートをもらいながら,合格ラインに届いていることを知る。
わたしがあんまり喜んでいない顔をしているので,受付の人に「決して悪くない点だと思いますよ」と気を使われる。ごめんなさい,ただわたしの中の職人魂が騒いで(※小夏の先祖は代々職人をやっておりました),完成度に満足していないだけなんです。


ジャッジシートで特に「良い」と評価されていたのは,最初の隅角と,速歩の斜め手前変換での歩幅を伸ばすところと,駈歩発進と20mの輪乗り及び直線での歩幅を伸ばす箇所(左右どちらも)。
平均よりも下げられていたのは,ボロで止まりかけた部分。常歩になってしまった所があったために,得意だった三湾曲蛇乗りの評価が低かった(←今日一番のがっかりポイント)。


うん,でも,まあ,よかった! 全体的に出来てたんだよ! そんな気がする!
ジャッジシートにも「大体よくできてます」って書いてあった!(´∀`;)


筆記の試験を受けている間に雨はやみ,雲が切れて晴れ間が見えるようになっていた。
鮮やかな青色が広がり,気温が上がり,まぶしいくらいの夏空が姿を現す。
今年の長い長い梅雨が,ようやく明けるのだ。

じりじりと照りつける太陽光を避けながら,外の馬場で行われている障害馬術の試合を見ていた。
ローカルな試合は,「何でもあり」な感じがとても楽しい。鐙上げで障害を跳んだり(60㎝くらいなら行けるらしい),本当に,試合って「ゲーム」なんだな,楽しむためにやるものなんだなと思った。

馬場の採点の集計には時間がかかるのか,少し時間が経ってから順位の放送があった。
優勝は逃したかもしれないけれど,参加者も多くなかったし,あとはどこまで順位を上げられるかだなー……なんて思っていたら,わたしと黒馬くんは1位になっていた。
動揺して,次にやるべき行動が一瞬わからなくなったので,とりあえず馬房に行って黒馬くんに報告することにした。ほ,褒めてあげなきゃ! あと,「ありがと」って!
馬房に行き,


馬 「ぼく,頑張ったよ!(●´ω`●)」

小夏 「よくやったねぇぇぇ!!! (*´∇`*)」


みたいなことを期待していたのだけれど,お馬さんはちょうど昼ごはんを食べている最中で,対応はクールなものだった。もぐもぐしながらも,一応顔は上げてこちらを見てくれるのだけれど,


馬 「別に……おれ,やることやっただけなんで」


みたいな感じで,わたしがベタベタ触りながら褒めるような雰囲気ではなかった。

お馬さんの世界には,「合格」も「優勝」もないのね(^_^;)
「練習」と「本番」の違いもないのかも。
ただ,怒られずにお仕事を終わらせて,ごはんを食べて,綺麗な馬房で眠れれば,それで満足なのかな。ある意味では羨ましいとも言える。


晴れ渡る夏空の下で,表彰台に上る。
明るく澄んだ,夏空を切り取ったような色のリボンを受け取った。


ああ……ようやく,ようやくここまで来られた。2級の試験に受かる日が来るとは思わなかった。
まだまだ力不足だけれど,ちゃんと合格したから,周りの人に「馬に乗れます」って言ってもいいかな。


一区切りついたから,これで心置きなく治療に専念できる。


帰り際にフロントで,受付の人に 「回復したら,またいつでも来てくださいね。お待ちしてますので」 と声をかけられる。

初めてここへやって来た日のことを思い出した。
あのときは,まだ,「乗馬」と「自分の日常生活」には大きな隔たりがあって,少し緊張していた。


「はい! ぜひ,また」 と笑って答えて,その場を去る。


少しずつ緊張を解いて,「乗馬」と「自分」の距離を縮めていく中で,随分たくさんの思い出ができたと思った。




*・゜゚・*:.。..。.:*・゜*・゜゚・*:.。..。.:*・゜


あ と が き


『馬々とりんごの日々』 は,ここで,第一幕が閉幕かな,という気がします。
これが物語で,わたしが作者なら,ひとまずここで筆を置くと思うからです。
初めて馬に触れて乗った日から,馬場2級の試験に合格するまで。
ここまでがきっと「第一幕」。

第二幕の開始がいつになるかはわかりませんが(できるだけ早く戻りたいとは思いますが),節目として,これまで関わってくださった方々に感謝していきたいと思います。


乗馬を始めるきっかけを与えてくださった知り合いの女性の方,ここまで教え導いてくださったインストラクターの方々,いつも感じよく接してくださるクラブの人たち,ブログやツイッターで応援してくださる大勢の方々,競技用のウェアやグローブやタイなどをお譲りくださった方,温かく見守ってくれている家族,審査をしてくださる先生方,乗せてくれるお馬さんたちと,そのお馬さんたちを世話してくださっている方々に,万感の思いを込めて。ありがとうございました。


   2019年7月 小夏

カット


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