小説『デルフィニア戦記』
1年以上に渡り,小夏が少しずつ読み進めてきた小説が間もなく読了となります。
もともとは昨年1月に友人から劇場版『デルフィニア戦記』のチケットを譲り受けたことから読み始めた物語です。

ときにはバスを待ちながら,ときにはカフェで,ときには病院の待合室で,ときには職場での昼休みに,ときには就寝前の布団の中で,ちまちまと読み進めてきました。1ヶ月に1~2冊ほど。非常にゆっくりとしたペースです。
趣味はたくさんあるけれど,読書はずっと昔から変わらずに持ち続けている趣味です。別世界に入り込めるというのは楽しいですね。(●´ω`●)♪
さて,今回紹介するこちらの作品,正統派の異世界ファンタジー小説です。
小説なので「馬の本」として紹介するのはどうかなと,少し迷いましたが,馬が頻繁に登場しているのでご紹介します。
創作小説の中で馬がどう表現されるのか,興味のある方はご一読くださいませ。
タイトル:『デルフィニア戦記』(全18巻)
作者:茅田砂胡
出版社:中央公論新社 (2003/1/23)


デルフィニア戦記 第I部 放浪の戦士1 (中公文庫)
【内容紹介】
男は剣を揮っていた。黒髪は乱れ日に灼けた逞しい長身のあちこちに返り血が飛んでいる。孤立無援の男が今まさに凶刃に倒れようとしたその時、助太刀を申し出たのは十二、三と見える少年であった……。
二人の孤独な戦士の邂逅が、一国を、そして大陸全土の運命を変えていく――。
(Amazonの紹介文から)
ここで「十二,三と見える少年」とありますが,この人物,実際には身体は少女です(中身は男なんだそうです)。名をリィと言い,異世界からやって来たのだそうで,べらぼうに強い身体と驚異的な頭脳と美貌を持ち合わせています。
ファンタジーのお話ではあるのですが,いわゆる異能だとか魔法だとか特殊技術だとか,そういった要素は,リィに関係するもの以外ほとんど出てきません。国民たちは中世ヨーロッパ風の国土と文化の中で,奇跡とは無縁の平凡な生活を送っています。交通手段は徒歩か馬か馬車(もしくは船)ですし,戦争時の武器も剣や槍や弓矢が主で,銃器などは出てきません。
大河ドラマのように,人間が知恵を絞り身体能力を駆使した結果,歴史が大きく動いていく物語が好きな人は,わくわくして読めるかもしれません。
わたしは読んでいて非常に楽しかったです。こういう話は血沸き肉踊りますね♪
ちなみに,わたしは中公文庫版で読んだので挿絵はなかったのですが,C★NOVELS版にはイラストがついているようです。



こういった中世風のファンタジー作品の登場人物たちの衣装に,長靴(ブーツ)やスリットの入った上衣が多いのは,馬に乗ることが多いからなんですね。
だって,動きやすくなくちゃ,どうにもならない。
話は逸れますが,現在のスーツのデザインにもみられる,スリットが背中にひとつのデザインは「センターベント(シングルベント)」と呼ばれ,仕立て屋さんには「馬乗り」という別名で知られているそうです。もともと乗馬における動きやすさを追求してできたデザインなのだとか。
スリットが両脇にふたつのものは「サイドベンツ(ダブルベンツ)」と呼ばれ,別名は「剣吊り」。剣の抜き差しを行う部分の名残なのだそうです。
どちらもカッコいいですね!
馬術の競技会などを見ていると,着用しているショージャケットには「センターベント」も「サイドベンツ」も,どちらのデザインもあるようです。わたしがいつか(遠い未来に?)試合のための乗馬服を買うことになったら,どっちのデザインを選ぼうかな~なんて,今から迷って楽しいです。
閑話休題。
それにしても,『精霊の守り人』シリーズもかなり楽しく読破したわたしですが(ええ,上橋菜穂子も大好きですよ),身体能力に優れた女が馬を乗りこなし,剣や槍をふるい,たった一人でこの世界を堂々と渡り歩いてゆく様って,本当に,見ていてすがすがしく,強い憧れを禁じえません。
カッコ良くて大好きで,何度も読んでしまいます。
ああ,こんな風になれたら……本気で自分の人生を生き切ったって言えるんじゃないかな。
女性にだって,そんな幸せがあってもいい。
さてさて,物語の第一部からお馬さんは重要な存在として登場しています。
ロアの黒主こと「グライア」という,それはもう素晴らしい馬が出てくるんですよ。
リィの愛馬となる,むちゃくちゃ貫禄のある雄の黒馬です。
暴れる黒主をリィが乗りこなす描写が圧巻。
【表紙に馬の絵がある巻】




似たような雰囲気の小説であっても,作品によっては,馬の描写ってほとんどされていなかったりします。ただの「乗り物」として扱われていて,名前も容姿も性格も出てこなければ,人間が馬をどう世話してどう乗りこなし,どうコミュニケーションをとっているのか,その部分が抜け落ちていることが多いです。
以前は,そういう書き方をされた小説でもそんなに気にならなかったのですが,乗馬にはまり込んだ現在では,その部分がなければリアリティに欠けて仕方がないのです。
その点,この『デルフィニア戦記』はびっくりするほど細かい描写があって(「腹帯を締める」とか「たてがみを掴む」とか)馬の表情までわかるし,「ああ,この作者はたぶん,馬に乗ったことがあるんだな」と感じます(実際はどうなんでしょう?)。
だって,緊急の用事で長距離を移動するときは,ちゃんと途中で馬替えるんですよ(笑)。
馬も生き物だから,全力で走れる距離は限られているのですが,自動車に慣れた現代人のわたしたちが「自動車の代用品」として馬を見てしまうと,こういう細かい点って見落としやすい部分だなと思うんです。
「作家は経験がものを言う」なんて話をずっと以前に聞いたことがあるのですが,たとえ架空の世界を描くファンタジー小説であっても,「実際に経験したこと」って大事なんだな,貴重だなと,こういうときに感じます。
……それにしても,馬は替えれば元気になるだろうけれど,騎手のほうは同じなのだから,何日も昼夜問わず疾走していたら,ものすごい疲労だろうな。
この小説の主要人物たちは皆体力に優れているのですが,馬に乗ることは決して「簡単なこと」として記されてはいないんですよ。
まあ,とにかく,間もなくこの長い物語も読み終えそうな今日この頃。
乗馬をやっている人間が読んでも「こんなの馬じゃない!(ノ`Д´)ノ 怒」なんてことにはならない(むしろ馬の描写も含めて面白い)小説ですので,大変おすすめです。
ご興味がありましたら是非どうぞ。

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1年以上に渡り,小夏が少しずつ読み進めてきた小説が間もなく読了となります。
もともとは昨年1月に友人から劇場版『デルフィニア戦記』のチケットを譲り受けたことから読み始めた物語です。

ときにはバスを待ちながら,ときにはカフェで,ときには病院の待合室で,ときには職場での昼休みに,ときには就寝前の布団の中で,ちまちまと読み進めてきました。1ヶ月に1~2冊ほど。非常にゆっくりとしたペースです。
趣味はたくさんあるけれど,読書はずっと昔から変わらずに持ち続けている趣味です。別世界に入り込めるというのは楽しいですね。(●´ω`●)♪
さて,今回紹介するこちらの作品,正統派の異世界ファンタジー小説です。
小説なので「馬の本」として紹介するのはどうかなと,少し迷いましたが,馬が頻繁に登場しているのでご紹介します。
創作小説の中で馬がどう表現されるのか,興味のある方はご一読くださいませ。
タイトル:『デルフィニア戦記』(全18巻)
作者:茅田砂胡
出版社:中央公論新社 (2003/1/23)
デルフィニア戦記 第I部 放浪の戦士1 (中公文庫)
【内容紹介】
男は剣を揮っていた。黒髪は乱れ日に灼けた逞しい長身のあちこちに返り血が飛んでいる。孤立無援の男が今まさに凶刃に倒れようとしたその時、助太刀を申し出たのは十二、三と見える少年であった……。
二人の孤独な戦士の邂逅が、一国を、そして大陸全土の運命を変えていく――。
(Amazonの紹介文から)
ここで「十二,三と見える少年」とありますが,この人物,実際には身体は少女です(中身は男なんだそうです)。名をリィと言い,異世界からやって来たのだそうで,べらぼうに強い身体と驚異的な頭脳と美貌を持ち合わせています。
ファンタジーのお話ではあるのですが,いわゆる異能だとか魔法だとか特殊技術だとか,そういった要素は,リィに関係するもの以外ほとんど出てきません。国民たちは中世ヨーロッパ風の国土と文化の中で,奇跡とは無縁の平凡な生活を送っています。交通手段は徒歩か馬か馬車(もしくは船)ですし,戦争時の武器も剣や槍や弓矢が主で,銃器などは出てきません。
大河ドラマのように,人間が知恵を絞り身体能力を駆使した結果,歴史が大きく動いていく物語が好きな人は,わくわくして読めるかもしれません。
わたしは読んでいて非常に楽しかったです。こういう話は血沸き肉踊りますね♪
ちなみに,わたしは中公文庫版で読んだので挿絵はなかったのですが,C★NOVELS版にはイラストがついているようです。
こういった中世風のファンタジー作品の登場人物たちの衣装に,長靴(ブーツ)やスリットの入った上衣が多いのは,馬に乗ることが多いからなんですね。
だって,動きやすくなくちゃ,どうにもならない。
話は逸れますが,現在のスーツのデザインにもみられる,スリットが背中にひとつのデザインは「センターベント(シングルベント)」と呼ばれ,仕立て屋さんには「馬乗り」という別名で知られているそうです。もともと乗馬における動きやすさを追求してできたデザインなのだとか。
スリットが両脇にふたつのものは「サイドベンツ(ダブルベンツ)」と呼ばれ,別名は「剣吊り」。剣の抜き差しを行う部分の名残なのだそうです。
どちらもカッコいいですね!
馬術の競技会などを見ていると,着用しているショージャケットには「センターベント」も「サイドベンツ」も,どちらのデザインもあるようです。わたしがいつか(遠い未来に?)試合のための乗馬服を買うことになったら,どっちのデザインを選ぼうかな~なんて,今から迷って楽しいです。
閑話休題。
それにしても,『精霊の守り人』シリーズもかなり楽しく読破したわたしですが(ええ,上橋菜穂子も大好きですよ),身体能力に優れた女が馬を乗りこなし,剣や槍をふるい,たった一人でこの世界を堂々と渡り歩いてゆく様って,本当に,見ていてすがすがしく,強い憧れを禁じえません。
カッコ良くて大好きで,何度も読んでしまいます。
ああ,こんな風になれたら……本気で自分の人生を生き切ったって言えるんじゃないかな。
女性にだって,そんな幸せがあってもいい。
さてさて,物語の第一部からお馬さんは重要な存在として登場しています。
ロアの黒主こと「グライア」という,それはもう素晴らしい馬が出てくるんですよ。
リィの愛馬となる,むちゃくちゃ貫禄のある雄の黒馬です。
暴れる黒主をリィが乗りこなす描写が圧巻。
【表紙に馬の絵がある巻】
似たような雰囲気の小説であっても,作品によっては,馬の描写ってほとんどされていなかったりします。ただの「乗り物」として扱われていて,名前も容姿も性格も出てこなければ,人間が馬をどう世話してどう乗りこなし,どうコミュニケーションをとっているのか,その部分が抜け落ちていることが多いです。
以前は,そういう書き方をされた小説でもそんなに気にならなかったのですが,乗馬にはまり込んだ現在では,その部分がなければリアリティに欠けて仕方がないのです。
その点,この『デルフィニア戦記』はびっくりするほど細かい描写があって(「腹帯を締める」とか「たてがみを掴む」とか)馬の表情までわかるし,「ああ,この作者はたぶん,馬に乗ったことがあるんだな」と感じます(実際はどうなんでしょう?)。
だって,緊急の用事で長距離を移動するときは,ちゃんと途中で馬替えるんですよ(笑)。
馬も生き物だから,全力で走れる距離は限られているのですが,自動車に慣れた現代人のわたしたちが「自動車の代用品」として馬を見てしまうと,こういう細かい点って見落としやすい部分だなと思うんです。
「作家は経験がものを言う」なんて話をずっと以前に聞いたことがあるのですが,たとえ架空の世界を描くファンタジー小説であっても,「実際に経験したこと」って大事なんだな,貴重だなと,こういうときに感じます。
……それにしても,馬は替えれば元気になるだろうけれど,騎手のほうは同じなのだから,何日も昼夜問わず疾走していたら,ものすごい疲労だろうな。
この小説の主要人物たちは皆体力に優れているのですが,馬に乗ることは決して「簡単なこと」として記されてはいないんですよ。
まあ,とにかく,間もなくこの長い物語も読み終えそうな今日この頃。
乗馬をやっている人間が読んでも「こんなの馬じゃない!(ノ`Д´)ノ 怒」なんてことにはならない(むしろ馬の描写も含めて面白い)小説ですので,大変おすすめです。
ご興味がありましたら是非どうぞ。

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出張中に本屋で1巻だけ買ったのですが、あまりに面白くて次の日には残り3冊を買いました。睡眠不足になってしまいました^^
海外のファンタジーはいくつか読んでいますが、日本のファンタジーのレベルがこれほど高いとは知りませんでした。残りの巻を読むのが楽しみです。